第6話:直撃 シャンパン・ボトル

夜の歌舞伎町。
きらびやかなネオンの海に、いつものラガーシャツ姿の島田巧(しまだたくみ)が溶け込んでいた。

目指すはおなじみの店「Le Rêve」。

「ルナちゃ~ん!今日もお前の笑顔で一日が報われるんや!」

上機嫌に席につき、タクミは大盤振る舞いでシャンパンを注文。

ルナは営業スマイルを保ちながらも、どこか落ち着かない様子だった。

「……なんや、ルナちゃん、今日は元気ないやないか?」

「い、いえ……その……」

ヒメカの視線が入口の方に泳いだ、その瞬間──。
ガラッ!とドアが開く音。
大柄の男が店内に飛び込んできた。

「エリ!帰ってきてくれ!俺が悪かったんだ、もう出て行くなんて言わないでくれ!」

ルナの本名を叫ぶその男は、ヒメカの元カレだった。

店内に緊張が走る。

キャストも客も息を飲む中、タクミが口を開いた。

「……おいおい、兄ちゃん。ここは竜宮城やぞ? 現実の痴話喧嘩は、漁村でやってくれや。な?」

男の目がギラリと光る。

「お前だな?毎晩エリの帰りを尾けてるっていうストーカーは!」

タクミ、深く一度だけ息を吸い、静かに言った。

「ストーカーやない。スポンサーや」

店内、凍りつく空気。
ルナが泣きながら叫ぶ。

「やめて!お店で喧嘩なんかしないで!」

しかし元カレ、逆上。

「テメェ!ふざけんなッ!」

タクミの胸ぐらを掴もうとしたその時──。
ヒメカが氷がたっぷり入ったアイスペールからシャンパンのボトルを手に取った。

涙で化粧が崩れた顔に決意が宿る。

「これまでやられた10倍返しよ……ッッッ!!」

振り下ろされたシャンパンボトル。

ゴン!!!

クリティカルヒットしたのは、……タクミの後頭部だった。

「なんでやねん……」

崩れ落ちるタクミの声は、か細く虚空に消えた…。

翌朝。

タクミは歌舞伎町のコンビニのレジに並んでいた。
後頭部のタンコブがやたらと目立つ。

片手には、おでんを入れた発泡スチロールの容器。
タクミは一つ一つ具を確認し、ブツブツと呟く。

「癒されるわけないやろ……こんなもんで……」

そっと、ちくわぶだけをおでんウォーマーに戻した。

第7話へつづく