今回は、舞台から転げ落ちた英語講師のエピソード。 「塾長……ちょっと……あの人、本気でどうにかしないと……」 島田巧(しまだたくみ)が鎮座する塾長室にやってきた東山(ひがしやま)が声をひそめた。 「誰のことや?」 「シノ […]
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第1話:資格よりも、人格やろ
「2年生の山根君の父兄から、クレームが入りました」 関東学力増進機構・塾長室。 昼下がりの静寂を打ち破るように、総務の東山(ひがしやま)が封筒を机に置いた。 「これが書面です」 ヒガシヤマは読み上げる。 「“大学進学を志 […]
Continue reading第27話:お節介な性分
Zoomの接続が完了するまでの数秒が、やけに長く感じられた。 画面に現れたのは、いつも通りのフクロウのアバター──“W.Navi”。 ゆっくりとした揺れを繰り返すだけの簡素なアニメーション。だが、そこに確かに「誰か」がい […]
Continue reading第26話:不安が趣味なのかもしれない(後編)
「不安が習慣、ですか……」 画面の向こうで、大学生の青年はつぶやいた。 Wのフクロウアバターは、変わらずゆっくりと揺れている。 「不安って、すごくやっかいですよね。でもね、無理に“なくそう”とすると、かえって暴れ出すんで […]
Continue reading第25話:不安が趣味なのかもしれない(前編)
Zoomの画面に現れたのは、まだ10代の面影を残す男子大学生だった。 少し猫背気味に椅子にもたれ、落ち着かない視線が画面の向こう側を泳いでいる。 「こんにちは、初めまして。神奈川大学の1年生です。ちょっとヘンな相談かもし […]
Continue reading第24話:塾が多すぎて、もうわかりません(後編)
Zoomの画面越し、Wのフクロウアバターがゆっくりと首を傾ける。 「……ミノウラさん。ご主人、不動産関係のお仕事でしたよね?」 突然の問いかけに、ヒデミは一瞬、目を丸くした。 「え? あ、はい……。賃貸管理の会社に勤めて […]
Continue reading第23話:塾が多すぎて、もうわかりません(前編)
Zoom越しの画面には、どこか疲れた様子の女性が映っていた。 背後には、整頓された本棚と、子ども向けの参考書が無造作に積まれている。 「こんにちは。今日は、すみません……ちょっとだけ、相談させてください」 箕浦秀美(みの […]
Continue reading第22話:やさしさの副作用
夜11時過ぎ。 Zoomの画面に映ったのは、白髪が目立ち始めた勘解由小路康夫(かでのこうじやすお)だった。 「ワナミ先生……夜分にすみません」 その声は少しかすれ、目の下には薄くクマが滲んでいた。 照明のせいではない、“ […]
Continue reading第21話:スピリチュアル教師の孤独(後編)
第20話からのつづき 「……逆に、それを突き詰めればいいんじゃないですか?」 「へっ!? 突き詰めるって、何を……?」 Zoom越しに、満月とクリスタルが輝く幻想的な背景を背にしたニッポリ研二が目を丸くする。 「つまり、 […]
Continue reading第20話:スピリチュアル教師の孤独(前編)
Zoomの画面に現れたのは、いつもながらインパクトのある背景だった。 満月とクリスタルが合成された、神秘と不思議が渦巻く宇宙的イメージ。 中央に佇むのは、渋谷の東大合格予備校STXの名物教員、日暮里研二(にっぽりけんじ) […]
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