第9話からのつづき ──その少年の名は、坂井ダイスケ。 下町の底辺高校に通う高校3年生。 成績は、下から数えた方が早い。 進路希望は「大学ならどこでも」と書き、担任から苦笑された。 しかも、ダイスケの家は貧しかった。 父 […]
Continue readingカテゴリー: 島田タクミの進路指導
第9話 :石川ユリナの転身
第8話からのつづき ──初夏の午後。 陽光がまぶしく、青々とした木々の影がアスファルトに揺れている。 島田タクミはカンゾウに向かう道を歩いていた。 煙草のフィルターを唇に挟み、片手で100円ライターを弄びながら。 保育園 […]
Continue reading第8話:森村ヒナタの理転
第7話からのつづき ──春先のことだった。 「こんにちは。体験授業を申し込みました、森村ヒナタです」 カンゾウの塾長室のドアが開いた。 島田タクミは、椅子にもたれたままチラリと顔を上げる。 高校の制服に、黒髪ストレートの […]
Continue reading第7話:左海シュンスケの改心
第6話からのつづき ──秋。 塾長室に、菓子折りが届いた。中には、銀座・虎屋の特製羊羹。箱の隅には小さな名刺。 《左海歯科医院 院長 左海達夫》 「ほう…ついに来たか」 島田タクミは、椅子にふんぞり返りながら、タバコに火 […]
Continue reading第6話:佐野原リリカの演出
第5話からのつづき ──春。 その日、塾長室のドアがノックされた。 「失礼します。体験授業を申し込みました、佐野原リリカです」 カンゾウの塾長・島田タクミは、チラッと顔を上げた。 長い髪をひとつに結び、真っすぐな瞳をこち […]
Continue reading第5話:村瀬カイトの再起
第4話からのつづき カンゾウの浪人コースの初日、島田タクミが教室を見回して言う。 「お前ら、全員“落ちこぼれ”だ。だが、見方を変えれば、“落とされた”んじゃない。自分で勝手に落ちただけだ」 このセリフにムカッときた村瀬カ […]
Continue reading第4話:白石ミサキの進学
第3話からのつづき ──高円寺。ネオンが瞬く夜の街。 キャバクラ『Café de Lune』。 島田タクミは、安いウイスキーをちびちび舐めながら、いつもの席に座っていた。 「あら、また来てくれたんですか? 指名料、もった […]
Continue reading第3話:村井リクトの法進
第2話からのつづき ──その日、島田タクミは不機嫌だった。 夕飯用に買ったスーパーの「おでんパック」。 「お得セット!」と書いてあったくせに、中身を開けてみたら── こんにゃく、白滝、そして、やたらでかいちくわぶ。 タク […]
Continue reading第2話:鈴木マナの現実
第1話からのつづき ──数日前、中野の安キャバにて。 「将来は絵の道に進みたいんです」 島田タクミの好みド真ん中、陰のある美大生キャバ嬢が、そう言った。 島田は、その夜、めずらしくマジメに口説いた。 だが── 「おじさん […]
Continue reading第1話:田所ユウトの覚醒
──田所ユウト。 その名を聞いて、何かを思い浮かべる人間は、当時のカンゾウ(関東学力増進機構)にはひとりもいなかった。 成績は中の下。 授業には出ているが、質問はしない。 真面目でも、不真面目でもない。 いるようで、いな […]
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