年末。 午後3時から4時の休憩時間が終わったのカンゾウ営業部には、そわそわとした空気が満ちはじめていた。 「おいおい、今日、何時上がりやねん」 「さっさと閉めようぜ、忘年会や!」 「成約? 知るか!」 ──誰も、受話器な […]
Continue readingカテゴリー: カンゾウ戦記 〜刹那の兵士たち〜
第10話:スピリチュアル女
カンゾウ営業部隊に、一人の「異国の姫」が舞い降りた。 その名も──小夜月姫香(さよづきひめか)。 履歴書には、堂々とそう記されていた。 本名か? 源氏名か? 誰も知らないし、誰も聞かない。 ここで重要なのは、オーダーを取 […]
Continue reading第9話:エア・オーダー爺
ここに、ひとりの男がいる。 年齢、実は70オーバー。 だが、白髪は染め上げられ、声にはやたらとハリがある。 白ワイシャツにネクタイ、その上にウインドブレーカーをいつも着ている。 電気屋か工務店の社長のようでもある。 […]
Continue reading第8話:地味な継続マン
何もなかった。 だが、すべてがそこにあった。 彼の名は、田山井光一(たやまいこういち)。 黒縁メガネに、地味なスーツ。 誰が見ても、街を歩けば5秒で忘れる顔。 声も小さく、滑舌も特段良いというわけでもない。 話し方は淡々 […]
Continue reading第7話:声だけ元アナウンス学院生
声だけは、誰にも負けなかった。 彼女の名は、川原田瑠美(かわはらだるみ)。 専門学校でアナウンス技術を学び、磨き上げた滑舌と、よく通る声。 営業部に配属されたその日、彼女は自信に満ちていた。 ──この声で、取れる、かもし […]
Continue reading第6話:盗人青年の捨てゼリフ
──彼は、朝だけは強かった。 名前は、酒々井純太(しすいじゅんた)。 高校中退。 つまり最終学歴は中卒。 その後は新聞配達で汗を流してきた。 誰よりも早く起き、誰よりも早く町を駆け抜け、誰よりも早く疲れた。 そして── […]
Continue reading第5話:トーク上手なゴスロリ女
彼女は、最初から、異彩を放っていた。 名前は、アズミ。 カンゾウ営業室にふらりと現れたその日、誰もが目を見張った。 黒いゴスロリワンピースに、編み上げブーツ。 カチューシャにはレースとリボン。 パッと見、年齢は…… […]
Continue reading第4話:元・公立高教師の末路
彼は、最初から、少し浮いていた。 新巻坂太志(あらまきざかふとし)。 履歴書には「都立高校 元物理教師」とあった。 年齢は50代後半。 背筋はシャキッとしていたが、どこか「学校」という小さな世界でしか生きてこなかった、そ […]
Continue reading第3話:元・厚労省ノンキャリア
その男がカンゾウ・関東上陸部隊に来たのは、ある蒸し暑い梅雨の午後だった。 白いポロシャツ。 彼は営業室に現れた。 肌は不自然なくらい色白でツルンとしており、汗に濡れた周囲の社員たちとは明らかに質感を異にしていた。 そして […]
Continue reading第2話:崖っぷちパワー
──カンゾウの「関東上陸部隊」電話営業室。 壁に沿って並べられた、くたびれたデスク。 タバコの焦げ跡だらけの受話器。 張り詰めた空気の中に、ときどきカラカラと乾いた笑い声がこぼれる。 ここが、カンゾウの心臓──命の電話を […]
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