カテゴリー: 島田タクミの自爆

第10話:総長、沈黙す。

第9話からのつづき ゴールデン街の小さなバーに、妙な静けさがあった。 常連たちが酒を傾ける中、ただひとり、重い空気をまとって焼酎を飲んでいる男がいた。 ──島田タクミ。 “名誉総長”と呼ばれた男である。 だが今、誰もそう […]

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第9話:週刊文潮、動く

四ツ谷・麹町付近にある週刊誌『週刊文潮』編集部。 記者のヤナギは、ここ最近伸びている“あるYouTubeチャンネル”に注目していた。 チャンネル名は『ハルカちゃんねる』── 登録者数はすでに5万人を超え、「トー横キッズ系 […]

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第8話:個人情報売買

メディカルデラックス、通称「メディデラ」の一室── “名誉総長”タクミのデスクには、分厚い紙束が無造作に置かれていた。 それは、講習申し込み用紙や進路調査票、生徒アンケート、さらには模試の結果票。 保護者の職業、世帯年収 […]

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第6話:名誉総長

それから半年。 タクミは教育業界から忽然と姿をくらましていた。 関東学力増進機構(カンゾウ)での傍若無人な日々も、高級天ぷらの香りも、女子大生マオの甘え声も──今はすべて、過去の残り香だった。 だが、タクミは死んではいな […]

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第5話:追放

その日も、関東学力増進機構(カンゾウ)の塾長室には、香ばしい天ぷらの匂いが充満していた。 スナック「うたかた」のテイクアウト。 もちろん、経費で落とした。 「おう、ヤマニシ。あれ、もう手配した?」 「はい、社長。コピー機 […]

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第4話:蜜月と離別

大久保の裏通りに、季節外れのおでんを出すスナックがある。 赤提灯ではない。 ネオン管の看板に「うたかた」と書かれた、どこか場末で、昭和風の洒落た店。 天ぷらが名物という変わり種だったが、真夏でも出汁の効いたおでんが美味い […]

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第3話:タクミ式マネジメント

「いいか。社員が“辞めたい”って言い出したら、“おめでとう”って言えばいいんだよ。」 タクミは社長椅子にふんぞり返りながら続ける。 「お前の人生、俺の船から降りるってんなら、せいぜい泳ぎ切ってみなってな」 関東学力増進機 […]

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第2話:肩書きと女に溺れる

島田タクミの「武器」は、電話営業だけではなかった。 もうひとつの武器──それは「肩書き」である。 タクミは自らをこう名乗っていた。 「東京大学卒。文科三類で心理学を専攻していたを専攻していた」 実際は、四国の大学中退であ […]

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第1話:栄光は誰のために

本名は島田巧(しまだたくみ)という。 だが、塾の関係者や教え子、保護者たちは誰もそうは呼ばなかった。 彼を知る者は、畏れと困惑、そしてある者は尊敬の念を込めてこう呼ぶ。 「塾長」と。 東京・山手線沿線の某所。 川沿いに建 […]

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