第11話からのつづき ──冬のゴールデン街。 ネオンもまばらな細い路地裏。 昭和が取り残されたようなスナックに、小さな明かりが灯っていた。 店名は「スナック・ルミ子」。 一見して普通の場末の店。 だがそのママは、かつてテ […]
Continue readingカテゴリー: 島田タクミの自爆
第11話:かつて「総長」と呼ばれたヒト
第10話からのつづき 東新宿、午後5時。 夕焼けに染まる細い路地を、ひとりの男が歩いていた。 島田タクミ──かつて“名誉総長”と呼ばれたその男は、今や肩書も居場所も失っていた。 シャツの襟は伸び、靴のかかとはすり減り、手 […]
Continue reading第10話:総長、沈黙す。
第9話からのつづき ゴールデン街の小さなバーに、妙な静けさがあった。 常連たちが酒を傾ける中、ただひとり、重い空気をまとって焼酎を飲んでいる男がいた。 ──島田タクミ。 “名誉総長”と呼ばれた男である。 だが今、誰もそう […]
Continue reading第9話:週刊文潮、動く
四ツ谷・麹町付近にある週刊誌『週刊文潮』編集部。 記者のヤナギは、ここ最近伸びている“あるYouTubeチャンネル”に注目していた。 チャンネル名は『ハルカちゃんねる』── 登録者数はすでに5万人を超え、「トー横キッズ系 […]
Continue reading第8話:個人情報売買
メディカルデラックス、通称「メディデラ」の一室── “名誉総長”タクミのデスクには、分厚い紙束が無造作に置かれていた。 それは、講習申し込み用紙や進路調査票、生徒アンケート、さらには模試の結果票。 保護者の職業、世帯年収 […]
Continue reading第7話:おでんギャグとキャバ手品
「名誉総長って、なんか響きがいいだろ? 総長ってだけで強そうなのに、さらに名誉までついてんだからな。最強だよ」 居酒屋のテーブルでタクミは、いつものように自慢げに言った。 誰も聞いていなかったが、タクミは気にしない。 こ […]
Continue reading第6話:名誉総長
それから半年。 タクミは教育業界から忽然と姿をくらましていた。 関東学力増進機構(カンゾウ)での傍若無人な日々も、高級天ぷらの香りも、女子大生マオの甘え声も──今はすべて、過去の残り香だった。 だが、タクミは死んではいな […]
Continue reading第5話:追放
その日も、関東学力増進機構(カンゾウ)の塾長室には、香ばしい天ぷらの匂いが充満していた。 スナック「うたかた」のテイクアウト。 もちろん、経費で落とした。 「おう、ヤマニシ。あれ、もう手配した?」 「はい、社長。コピー機 […]
Continue reading第4話:蜜月と離別
大久保の裏通りに、季節外れのおでんを出すスナックがある。 赤提灯ではない。 ネオン管の看板に「うたかた」と書かれた、どこか場末で、昭和風の洒落た店。 天ぷらが名物という変わり種だったが、真夏でも出汁の効いたおでんが美味い […]
Continue reading第3話:タクミ式マネジメント
「いいか。社員が“辞めたい”って言い出したら、“おめでとう”って言えばいいんだよ。」 タクミは社長椅子にふんぞり返りながら続ける。 「お前の人生、俺の船から降りるってんなら、せいぜい泳ぎ切ってみなってな」 関東学力増進機 […]
Continue reading第2話:肩書きと女に溺れる
島田タクミの「武器」は、電話営業だけではなかった。 もうひとつの武器──それは「肩書き」である。 タクミは自らをこう名乗っていた。 「東京大学卒。文科三類で心理学を専攻していたを専攻していた」 実際は、四国の大学中退であ […]
Continue reading第1話:栄光は誰のために
本名は島田巧(しまだたくみ)という。 だが、塾の関係者や教え子、保護者たちは誰もそうは呼ばなかった。 彼を知る者は、畏れと困惑、そしてある者は尊敬の念を込めてこう呼ぶ。 「塾長」と。 東京・山手線沿線の某所。 川沿いに建 […]
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