カテゴリー: 西のキングダム

第10話(終):骨抜きの帰還

斑鳩塾・講堂。 冷房の効いた広い講堂には、淡い檜の香りが漂っていた。 壇上ではウルシベが和装姿のまま、ゆったりとした所作で演台に立っている。 「知識や技術だけを教えていても、医師は育ちません。私たちは“心”と“姿勢”を育 […]

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第9話:医療人材の育成

今朝も、斑鳩の空は深い蒼に澄み渡っている。 古びた旅館の窓を開け放つと、庭先の苔むした石灯籠に朝日が当たり、まるで遠い昔から変わらぬ風景のようだった。 「結局、手ぶらで帰るだけかよ……」 浴衣姿のまま、ゴンドウはぼそりと […]

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第8話:茶室にて

翌朝。 奈良盆地の夜明けは遅く、斑鳩の空はまだ藍色を帯びていた。 旅館の部屋の障子越しに、うっすらと朝の光が差し込み始める。 ゴンドウは枕元のスマホを確認した。 時刻はまだ午前6時前。 (……まだこんな時間かよ) 昨夜の […]

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第7話:斑鳩荘の夜

夜の病院見学を終えたゴンドウは、再びウルシベの黒塗りのレクサスに乗せられた。 「今宵は、少し遅くなりますが……よろしいでしょうか?」 柔らかな和装の袖を揺らし、漆部は微笑む。 車が止まったのは、法隆寺からもほど近い閑静な […]

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第6話:寺と農家の学生寮

IMSプログラムの病院見学を終えたゴンドウは、まだ興奮冷めやらぬ顔でレクサスLSの後部座席に乗り込んだ。 助手席には漆部館長が座っている。 運転席には、和装のウルシベに合わせたかのように、黒スーツを着たスタッフが静かにシ […]

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第5話:IMSプログラム

午後の斑鳩塾。 エントランスを進んだ正面の壁に、荘厳なタペストリーのように並ぶ写真とパネルがあった。 ゴンドウは、思わず足を止めた。 目の前に広がるのは、医学部に合格した卒業生たちの“顔”だった。 いや、“顔”というより […]

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第4話:魅了する講義

イカルガ塾、講師控室前。 廊下の壁には、講師一覧が掲示されていた。 ゴンドウは立ち止まり、そのパネルをじっと見つめた。 ──何だこれ。 顔写真と名前、そして出身大学や経歴が、洗練されたデザインで並んでいる。 だが、記載さ […]

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第3話:イカルガシステム

斑鳩の空は、早朝の青を透かしたまま、昼過ぎには白く乾いた光を落としていた。 ゴンドウ龍太郎は、館内用のスリッパに履き替え、イカルガ塾・本館の廊下を漆部館長に案内されていた。 廊下の両側には大小の教室が並び、そのガラス張り […]

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第2話:入塾の懇願

重厚な障子戸の向こうで、わずかな物音がした。 ゴンドウは、畳に正座したまま背筋を伸ばし、微かに響く声に耳を澄ませた。 (……誰か来たのか……?) 襖の隙間から、涼やかな夏の風が吹き込む。 鶯の声が遠くで響き、瓦屋根に当た […]

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第1話:王国の門

午後三時を過ぎたばかりだというのに、斑鳩の空には夏を思わせる入道雲がむくむくと湧き立っていた。 遠くで微かに雷鳴が響き、湿った風が法隆寺の土塀沿いを静かになでていく。 この町には、千四百年前から変わらぬ時間が流れている。 […]

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