中高一貫の女子校生活は退屈だった。
周囲の女子は皆、必死に勉強していた。
でも私は例によって必死じゃなかった。
部活はソフトテニス部に入った。
テニスは楽しかった。いい気分転換になった。
だけど、部長や副部長の座を巡る女たちの目線がギラギラしていて鬱陶しかった。
内申点アップ?
推薦入学実績?
そんなもののために血眼になってどうするの。
私はあえてヘタレ役を演じた。
部長候補に挙げられないように、適度に抜けてるフリをした。
だって、部長になんかされたら──
生徒からの嫉妬や揚げ足取り。
保護者からのクレーム。
「うちの娘が部長じゃないなんておかしい」
知らんがな。
そんなくだらないことで消耗するくらいなら、マイペースにテニスを楽しむ方がマシだ。
*
本も結構読んだ。
谷崎潤一郎、川端康成、三島由紀夫、村上春樹。
変態ばっかりだ。
リアルで会いたいと思うような人種じゃない。
でも彼らには共通点がある。
頭が良くて、持久力がある。
だからむっつりスケベなんだ。
その歪みが文章に滲み出る。
そこが面白かった。
太宰治が好きなクラスメートもいたけど、私から見れば太宰治なんて小心者のナルシストだ。
*
高校3年。
周囲は大学受験で目の色を変えていた。
でも私は、そんな空気が嫌だった。
だから学校の図書館や帰り道のカフェで、ジョージ・オーウェルやガルシア・マルケスを読んで不愉快で複雑な気分になることを楽しんでいた。
別にいい大学に入ればいい人生が保障されるわけじゃない。
でも、学歴フィルターに引っかかって後々苦労するのも嫌だった。
三者面談で担任に言われた。
「クロイワさんは上智の文学部だったら合格圏内ですよ」
「じゃあ、そこにします」
その大学は家から通学が便利だった。
それで決めた。
憧れがあったわけじゃない。
やりたいことがあったわけでもない。
ただ、自分に合った空きピースがそこにあった。
私はそこにスッとハマっただけ。
それ以上でも、それ以下でもなかった。
第3話へつづく