ここに、ひとりの男がいる。 年齢、実は70オーバー。 だが、白髪は染め上げられ、声にはやたらとハリがある。 白ワイシャツにネクタイ、その上にウインドブレーカーをいつも着ている。 電気屋か工務店の社長のようでもある。 […]
Continue readingタグ: 電話営業
第8話:地味な継続マン
何もなかった。 だが、すべてがそこにあった。 彼の名は、田山井光一(たやまいこういち)。 黒縁メガネに、地味なスーツ。 誰が見ても、街を歩けば5秒で忘れる顔。 声も小さく、滑舌も特段良いというわけでもない。 話し方は淡々 […]
Continue reading第1話:命の電話
ここは、カンゾウ。 正式名称──関東学力増進機構。 中堅予備校の中でも、なぜか「中堅大手」と自称してはばからない存在である。 常時在籍する生徒数は200人以上。 多い時は300人に近づくこともある。 東大をはじめとする国 […]
Continue reading第10話:風はバブルの彼方から
──1990年代、大久保。 バブル崩壊後の東京は、あらゆるものが色を失っていた。 新宿から徒歩圏内、線路沿いのこの街も例外ではない。 シャッターを下ろした店舗。 誰もいないオフィス。 空きビルに、薄汚れた「テナント募集中 […]
Continue reading第7話:主役と脇役
都内某所──川沿いの倉庫跡地に建てられた灰色の6階建てビル。 その最上階にある一室。 分厚いカーテン、応接セット、クリスタルの灰皿に山積みの吸い殻。 関東学力増進機構(カンゾウ)の「塾長室」だった。 そして、そこにふんぞ […]
Continue reading第1話:栄光は誰のために
本名は島田巧(しまだたくみ)という。 だが、塾の関係者や教え子、保護者たちは誰もそうは呼ばなかった。 彼を知る者は、畏れと困惑、そしてある者は尊敬の念を込めてこう呼ぶ。 「塾長」と。 時は2010年代。 場所は、東京・山 […]
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