ゴンドウが勤務していた教材会社の名前は、桜教育サービス株式会社。 大学受験用の教材を制作・卸販売し、全国の中学・高校・予備校に配布している会社だった。 問題集、解説集、模擬試験セット── とにかく分厚い紙の束を作り、それ […]
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第4話:名簿屋の地味な夜明け
「……あの、企画案、これで出しておきます」 コピー用紙を3枚重ねて、上司の机に置く。 旅行代理店での5年目。 配属されたのは、国内パッケージツアーのプランニング部門だった。 地味な業務ではあったが、文句はなかった。 ホテ […]
Continue reading第3話:主役じゃないということ
第2話からのつづき 昭和から平成に時代が変わる直前、権藤龍太郎(ゴンドウリュウタロウ)は、旅行代理店に就職した。 業界No.6の中堅企業。 華やかさこそないが、堅実で、倒産することはなさそうな会社だった。 配属先は、本社 […]
Continue reading第2話:地味な春の光
ゴンドウの大学生活の4年間── それは、特筆すべきことが何ひとつ起こらない時間だった。 所属していたのは「会計研究会」──通称“カイケン”。 会計といっても、やっていることは簿記の演習と、月に一度の飲み会、あとは年に数回 […]
Continue reading第1話:平塚ブルース
本名は、権藤龍太郎(ごんどう・りゅうたろう)。 初対面でフルネームを名乗ると、たいていこう言われる。 「なんか、政治家かフィクサーみたいな名前ですね」 それもそのはず、名字は画数の多い「権藤」、名前も「龍太郎」という仰々 […]
Continue reading第12話(終):ちくわぶの夜
──冬のゴールデン街。 ネオンもまばらな細い路地裏。 昭和が取り残されたようなスナックに、小さな明かりが灯っていた。 店名は「ルミ子」。 一見して普通の場末の店。 だがそのママは、かつて報道番組で活躍した元・キャスターだ […]
Continue reading第11話:かつての「総長」
東新宿、午後5時。 夕焼けに染まる細い路地を、ひとりの男が歩いていた。 島田タクミ。 かつて「名誉総長」と呼ばれたその男は、今や肩書も居場所も失っていた。 シャツの襟は伸び、靴のかかとはすり減り、手にした紙袋の中にはスー […]
Continue reading第10話:総長、沈黙す。
ゴールデン街の小さなバーに、妙な静けさがあった。 常連たちが酒を傾ける中、ただひとり、重い空気をまとって焼酎を飲んでいる男がいた。 島田タクミ。 かつて「名誉総長」と呼ばれた男である。 だが今、誰もそう呼ぶ者はいなかった […]
Continue reading第9話:週刊文潮、動く
四ツ谷・麹町付近にある週刊誌『週刊文潮』編集部。 記者のヤナギは、ここ最近伸びている“あるYouTubeチャンネル”に注目していた。 チャンネル名は『ハルカちゃんねる』。 登録者数はすでに5万人を超え、「トー横キッズ系か […]
Continue reading第8話:個人情報売買
メディカルデラックス、通称「メディデラ」の一室。 名誉総長・タクミのデスクには、分厚い紙束が無造作に置かれていた。 それは、講習申し込み用紙や進路調査票、生徒アンケート、さらには模試の結果票。 保護者の職業、世帯年収、住 […]
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