第11話からのつづき ──その日の夜。 イチカワ雄二は、ファミレスの片隅で、ノートパソコンを開いていた。 「エゾエ……あんた、見る目ないね」 ニヤリと笑う。 「こっちはもう次のステージに進んでるんで──」 画面には、新し […]
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第2話:鈴木マナの現実
──数日前、中野の安キャバにて。 「将来は絵の道に進みたいんです」 島田タクミの好みド真ん中、陰のある美大生キャバ嬢が、そう言った。 島田は、その夜、めずらしくマジメに口説いた。 だが── 「おじさん、無理。生理的に無理 […]
Continue reading第20話(終):塾長・広瀬春香
夜の空気に、冬の匂いが混じる。 コートの襟を立てながら、駅前の雑踏を歩く彼女の姿は、どこか堂々としていた。 ──広瀬春香、33歳。 いまでは、年商3億の教育系企業『spring』の代表取締役であり、人気予備校の塾長である […]
Continue reading第12話:ようこそ、トー横へ
その夜、新宿は風が強かった。 東宝ビルの巨大なゴジラヘッドが、街の明るさとは裏腹に、不気味に浮かび上がっていた。 「……ここが、トー横」 正確には、“新宿東宝ビルの横”。 略して“トー横”。 ビルと駐車場の隙間にある細い […]
Continue reading第10話:滑り落ちた春
第9話からのつづき 春は、静かに過ぎていった。 合格発表の掲示板の前に、ハルカの名前はなかった。 スマホを何度更新しても、結果は変わらなかった。 滑り止めの私大すら受けていない。 ──落ちた。 「浪人か……」 呟いた声は […]
Continue reading第9話(終):いつものおでん
ゴールデン街の裏通り。 夜風が少しだけやわらいだ頃、ゴンドウ龍太郎は“あの店”のドアを静かに開けた。 ──スナック「うらがわ」。 かつてテレビにちょっとだけ出ていたという噂のあるママが、一人でやっている店。 壁には色あせ […]
Continue reading第12話(終):ちくわぶの夜
──冬のゴールデン街。 ネオンもまばらな細い路地裏。 昭和が取り残されたようなスナックに、小さな明かりが灯っていた。 店名は「ルミ子」。 一見して普通の場末の店。 だがそのママは、かつて報道番組で活躍した元・キャスターだ […]
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