第6話からのつづき 「名誉総長って、なんか響きがいいだろ? 総長ってだけで強そうなのに、さらに名誉までついてんだからな。最強だよ」 居酒屋のテーブルでタクミは、いつものように自慢げに言った。 誰も聞いていなかったが、タク […]
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第6話:名誉総長
それから半年。 島田タクミは教育業界から忽然と姿をくらましていた。 関東学力増進機構(カンゾウ)での傍若無人な日々も、高級天ぷらの香りも、女子大生マオの甘え声も──今はすべて、過去の残り香だった。 だが、タクミは死んでは […]
Continue reading第5話:追放
第4話からのつづき その日も、カンゾウ(関東学力増進機構)の塾長室には、香ばしい天ぷらの匂いが充満していた。 スナック「うたかた」のテイクアウト。 もちろん、経費で落とした。 「おう、ヤマニシ。あれ、もう手配した?」 「 […]
Continue reading第4話:蜜月と離別
第3話からのつづき 大久保の裏通りに、季節外れのおでんを出すスナックがある。 赤提灯ではない。 ネオン管の看板に「うたかた」と書かれた、どこか場末で、昭和風の洒落た店。 天ぷらが名物という変わり種だったが、真夏でも出汁の […]
Continue reading第3話:タクミ式マネジメント
第2話からのつづき 「いいか。社員が“辞めたい”って言い出したら、“おめでとう”って言えばいいんだよ。」 タクミは社長椅子にふんぞり返りながら続ける。 「お前の人生、俺の船から降りるってんなら、せいぜい泳ぎ切ってみなって […]
Continue reading第2話:肩書きと女に溺れる
島田タクミの「武器」は、電話営業だけではなかった。 もうひとつの武器──それは「肩書き」である。 タクミは自らをこう名乗っていた。 「東京大学卒。文科三類で心理学を専攻していたを専攻していた」 実際の学歴は、四国の大学中 […]
Continue reading第1話:栄光は誰のために
本名は島田巧(しまだたくみ)という。 だが、塾の関係者や教え子、保護者たちは誰もそうは呼ばなかった。 彼を知る者は、畏れと困惑、そしてある者は尊敬の念を込めてこう呼ぶ。 「塾長」と。 時は2010年代。 場所は、東京・山 […]
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