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第14話:白髪の予兆

──高田馬場・カンゾウ、塾長室。 重たい空気が漂っていた。 島田タクミは、いつものラグビージャージ姿で椅子にふんぞり返っていた。 クリスタルの灰皿の上で紙巻きタバコを消した後、机の上のチラシをぐしゃぐしゃに丸めていた。 […]

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第13話:戻る場所

──春、STX・鳳凰の間。 金ピカのフェニックス像が、今日もギラギラと光っている。 サギヤタカシ塾長は、ソファにふんぞり返り、満足げに笑った。 「おい、コックリ!」 「はい、ニッポリです!」 小柄で笑顔の絶えない男、ニッ […]

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第12話:すれ違い

──秋の気配が、じわじわとカンゾウを包みはじめた。 夏期講習が終わり、河口湖合宿からも戻ったリョウスケは、その頃から、少しずつ様子が変わり始めていた。 疲労が顔ににじみ、どこか集中力が切れているようだった。 秋の模試でも […]

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第11話:秘策

──高田馬場・カンゾウ、塾長室。 梅雨の気配が忍び寄るある日の午後。 塾長・島田タクミは、いつものように机に足を投げ出し、紙巻きタバコをふかしていた。 「おう、スタッフ一同!」 部屋に集められたスタッフたちに、タクミは上 […]

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第10話:逃した魚

──渋谷・STX、鳳凰の間。 金ピカのフェニックス像が鎮座する、特別室「フェニックス・ルーム」。 そのテーブルに、サギヤタカシ塾長が座っていた。 金髪オールバックを指でいじりながら、スーツの裾を何度もパシパシと払い、やた […]

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第9話:素直な心

春。 カンゾウの指導室には、まだ微かに冷たい空気が漂っていた。 リョウスケは机に向かい、まっすぐに座っていた。 かつての彼なら、どこか上の空で、心ここにあらずという雰囲気をまとっていたかもしれない。 だが今は違った。 ─ […]

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第8話:金づるリターン

──高田馬場・カンゾウ。 春、まだ冷たい風の吹くある日。 カンゾウ塾長室に、一報が届いた。 「白井リョウスケ、再申し込み!」 島田タクミは、その言葉を聞くなり、顔をほころばせた。 「おお、金づるリターンじゃ!」 タクミは […]

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第7話:また、ここから

冬が、終わった。 東大の合格発表。 掲示板の前に立ったリョウスケは、何度も自分の受験番号を探した。 けれど、どこにもなかった。 滑り止めで受けた私立大学には2つ合格していた。 だが、リョウスケの目に、それらの通知書は、た […]

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