「最近の若い奴は、って言いたくはないんですけどね」 その言葉で、オンラインの相談が始まった。 画面に映っているのは、スーツ姿の男性。 名は古田和久(ふるたかずひさ)。 年の頃は40代半ばで、大手家電メーカーの中間管理職だ […]
Continue reading第8話:書けなくなった小説家(後編)
前編からのつづき 「あなたは、“好き勝手にやってもいい立場”にいると、自覚していますか?」 フクロウの声は変わらず穏やかだった。 その口調は、責めるでも急かすでもなく、淡々と問いを投げかけているだけに思えた。 ミズハラは […]
Continue reading第7話:書けなくなった小説家(前編)
Zoomの接続が完了するまでの一瞬、モニターには自分の顔が映った。 一瞬だけ、睨むような目をしていたのに気づいて、水原創一(みずはらそういち)は小さく息を吐いた。 その直後、画面の向こうに現れたのは──フクロウのアバター […]
Continue reading第6話:夢のない作文(後編)
第5話からのつづき 「ユウトさん、“目上の人に好かれる人間”って、どう思います?」 フクロウのアバターが、静かにもう一度首を傾けた。 「……え?」 ユウトの顔が、ほんのり驚きに染まる。 でも、ただの驚きではない。 小学生 […]
Continue reading第5話:夢のない作文(前編)
Zoomの接続が完了するまでの数秒が、やけに長く感じられた。 志村悠斗(しむらゆうと)、小学6年生。 Zoomの接続が完了するまでの3秒が、妙に長く感じられた。 ユウトは、小さく深呼吸をしてから画面を見つめた。 現れたの […]
Continue reading第4話:論破したいんですが(後編)
第3話からのつづき 「マサヒトさん、あなたは──Wi-Fiを、信じていますか?」 フクロウのアバターは、相変わらず無表情だった。 でも、その問いかけには、やわらかい棘のようなものがあった。 「……え? まあ……信じてるっ […]
Continue reading第3話:論破したいんですが(前編)
Zoomの接続が完了するまでの数秒。 その間にも、阿久津公士(あくつまさひと)は、眼鏡のブリッジを押し直しながら、モニターを見つめていた。 “W.Navi” 名前の横に表示されたのは、無表情のフクロウのアバター。 まった […]
Continue reading第2話:数字に揺れる私(後編)
前編からのつづき 「深さの話を、しましょうか」 そう言ったとき、画面の中のフクロウの目には、やはり何の変化もなかった。 でもその声には、ごくわずかに──ほんのわずかに──暖かさがにじんでいた気がする。 リナは黙って頷いた […]
Continue reading第1話:数字に揺れる私(前編)
Zoomの接続が完了するまでの三秒が、やけに長く感じた。 小川莉奈(おがわりな)は、軽く息を吐いて画面を見た。 出てきたのは、フクロウのアバター。 名前の欄には“W.Navi”とだけ表示されている。 声はまだ聞こえない。 […]
Continue reading第11話(最終話):忘年の宴
年末。 午後3時から4時の休憩時間が終わったのカンゾウ営業部には、そわそわとした空気が満ちはじめていた。 「おいおい、今日、何時上がりやねん」 「さっさと閉めようぜ、忘年会や!」 「成約? 知るか!」 ──誰も、受話器な […]
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