大学3年の秋。私はキャバクラで働き始めた。 冷静に考えれば、遅すぎるとも言えるし、早すぎるとも言える。 でも、私の中では“ちょうどいいタイミング”だった。 なぜなら── 大学も、サークルも、バイトも。 全部、飽きたから。 […]
Continue reading第4話:ザンネンウォッチング
大学という鳥籠がつまらなかったから、私は、街に出た。 “働く”という行為には、何か違う刺激があるんじゃないか── そんな期待も、ほんの少しだけあった。 けれども。 * 最初に入ったのは、タリーバックスだった。 このカフェ […]
Continue reading第3話:大学って、こんなもの?
大学に入れば、もう少し“面白いこと”があると思っていた。 入学式の帰り道、四ツ谷駅のホームで見上げた空は悪くなかった。 風もあったし、日差しもほどよかった。 でも、大学は風をくれなかった。 吹いたのは、湿った空気だけだっ […]
Continue reading第2話:テニス部と変態作家たち
中高一貫の女子校生活は退屈だった。 周囲の女子は皆、必死に勉強していた。 でも私は例によって必死じゃなかった。 部活はソフトテニス部に入った。 テニスは楽しかった。いい気分転換になった。 だけど、部長や副部長の座を巡る女 […]
Continue reading第1話:べつに頑張ってないから
私は思う。 人には「大」か「小」しかいない。 時々「中」もいるが滅多にいない。「大」なんて絶滅危惧種だ。 小学二年のとき。 授業中に担任から言われた。 「クロイワさんはいつもテストでいい点数とってえらいね。いっぱい勉強頑 […]
Continue reading第10話(終):骨抜きの帰還
斑鳩塾・講堂。 冷房の効いた広い講堂には、淡い檜の香りが漂っていた。 壇上ではウルシベが和装姿のまま、ゆったりとした所作で演台に立っている。 「知識や技術だけを教えていても、医師は育ちません。私たちは“心”と“姿勢”を育 […]
Continue reading第9話:医療人材の育成
今朝も、斑鳩の空は深い蒼に澄み渡っている。 古びた旅館の窓を開け放つと、庭先の苔むした石灯籠に朝日が当たり、まるで遠い昔から変わらぬ風景のようだった。 「結局、手ぶらで帰るだけかよ……」 浴衣姿のまま、ゴンドウはぼそりと […]
Continue reading第8話:茶室にて
翌朝。 奈良盆地の夜明けは遅く、斑鳩の空はまだ藍色を帯びていた。 旅館の部屋の障子越しに、うっすらと朝の光が差し込み始める。 ゴンドウは枕元のスマホを確認した。 時刻はまだ午前6時前。 (……まだこんな時間かよ) 昨夜の […]
Continue reading第7話:斑鳩荘の夜
夜の病院見学を終えたゴンドウは、再びウルシベの黒塗りのレクサスに乗せられた。 「今宵は、少し遅くなりますが……よろしいでしょうか?」 柔らかな和装の袖を揺らし、漆部は微笑む。 車が止まったのは、法隆寺からもほど近い閑静な […]
Continue reading第6話:寺と農家の学生寮
IMSプログラムの病院見学を終えたゴンドウは、まだ興奮冷めやらぬ顔でレクサスLSの後部座席に乗り込んだ。 助手席には漆部館長が座っている。 運転席には、和装のウルシベに合わせたかのように、黒スーツを着たスタッフが静かにシ […]
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