第8話からのつづき 春。 カンゾウの指導室には、まだ微かに冷たい空気が漂っていた。 リョウスケは机に向かい、まっすぐに座っていた。 かつての彼なら、どこか上の空で、心ここにあらずという雰囲気をまとっていたかもしれない。 […]
Continue reading第8話:金づるリターン
第7話からのつづき ──高田馬場・カンゾウ。 春、まだ冷たい風の吹くある日。 カンゾウ塾長室に、一報が届いた。 「白井リョウスケ、再申し込み!」 島田タクミは、その言葉を聞くなり、顔をほころばせた。 「おお、金づるリ […]
Continue reading第7話:また、ここから
第6話からのつづき 冬が、終わった。 東大の合格発表。 掲示板の前に立ったリョウスケは、何度も自分の受験番号を探した。 けれど、どこにもなかった。 滑り止めで受けた私立大学には2つ合格していた。 だが、リョウスケの目に、 […]
Continue reading第6話:それぞれの夏
第5話からのつづき 渋谷・STX。 白井リョウスケは、日々、授業と自習に追われていた。 STXには、スピリチュアルな講師・ニッポリ研二のような少し変わった存在もいたが、大半の講師は至極真っ当だった。 教え方も丁寧で、質問 […]
Continue reading第5話:ふたつの塾長室
第4話からのつづき ──渋谷・STX。 白井リョウスケが食事を終え、勉強机に向かっていたころ。 渋谷駅近くにある予備校、STXでは、一つの小さな塾長室で、ヒソヒソと声が交わされていた。 「おい、マッコリ!」 「はい!ニッ […]
Continue reading第4話:ギターの余韻
第3話からのつづき 白井家のダイニング。 大理石調のテーブルに並ぶのは、オイシックスの高級ミールキットで作られたディナー。 鱒のムニエル、キヌアとクレソンのサラダ、ひよこ豆のポタージュ。 完璧に”正しい […]
Continue reading第3話:フェニックスパワー
第2話からのつづき。 ──渋谷・STX。 白井リョウスケは、STXの小講義室に座っていた。 壁には、金ピカで刻まれた言葉。 「Rise Again with Infinite Power」 (……まあ、予備校って、こんな […]
Continue reading第2話:怒りの塾長室
第1話からのつづき ──高田馬場、関東学力増進機構(通称:カンゾウ)。 塾長室は、くすんだ応接セットと、パーティション代わりの古びた本棚で仕切られていた。 窓際には枯れかけた観葉植物。 何年も前に買ったままの空気清浄機が […]
Continue reading第1話:鳳凰の間へ
JR渋谷駅から徒歩6分ほどの雑居ビル街──。 その中のひとつに外観がくすんだ灰色の建物がある。 だが、そのビル最上階は、異様な輝きを放っていた。 ビルのエレベーターを降りると、目の前に金色の真鍮プレートが掲げられている。 […]
Continue reading第8話(終):変わらぬ日々
第7話からのつづき ある朝、スマホを開いたリナは、たまたま流れてきたニュースに目を留めた。 【速報】 医学部専門予備校「メディカルデラックス」名誉総長、島田巧氏、不正疑惑浮上 大きな見出し。 そして── 『オレは何も悪く […]
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