──メディカルデラックス本部ビル・7階 面接室。 午後4時。 扉が控えめにノックされる。 「……失礼いたします」 静かに入ってきたのは、真面目そうな女性だった。 ──森川恵(もりかわめぐみ)・29歳。 東京外国語大学大学 […]
Continue reading第6話:教育現場の後方指揮官
高校野球を引退したあと、エゾエはスポーツ推薦で都内の中堅私立大学に進学した。 経営学部に所属し、野球部にも入った。 だが、そこにはもう、かつてのような“燃える何か”はなかった。 「野球じゃない”何か̶ […]
Continue reading第5話:敗北のキャプテン
──時代は1980年代。 甲子園のアルプス席では「サウスポー」と「狙いうち」が一日中鳴り響いていた頃。 高校野球は、“青春のすべて”だった。 地方都市にある私立高校──その野球部のキャプテンが、江添慎太郎(えぞえしんたろ […]
Continue reading第4話:自分探し君
──午後3時すぎ。メディカルデラックスの応接室。 面接室のドアが、勢いよく開かれた。 「はじめましてっ!!」 ドアから入ってきたのは、やや小柄で、やけに頭が大きい男。 白いワイシャツはボタンダウン。 ダークイエローのチノ […]
Continue reading第3話:元ブラック労働マン
受験業界では通称「メディデラ」と呼ばれている医学部専門予備校・メディカルデラックス。 本部ビルのガラス張りの面接室に、スーツ姿の男が姿を現した。 時計は、午後2時半を指していた。 ノック3回。ドアが開き、男がやや緊張した […]
Continue reading第2話:いわゆるシゴデキ男
受験業界では通称「メディデラ」と呼ばれている医学部専門予備校・メディカルデラックス。 本部のガラス張りの面接室に、スーツ姿の男が姿を現した。 時計は、午前11時きっかりを指していた。 ノック3回。ドアが開き、男が柔らかな […]
Continue reading第1話:先生と呼ばれたくて
医学部専門予備校・メディカルデラックス本部。 都庁を望む副都心の高層ビル街。 その一角に建つオフィスビルのひとつ、その34階の応接フロアに、午後の日差しがやわらかく差し込んでいた。 磨き抜かれたガラス窓の向こうには、遠く […]
Continue reading第6話(終):マイ・ソウル
避暑地・山中湖。 その湖畔に立つ、ログハウス風の豪華な別荘──それが、STXプレジデント・サギヤの所有する“フェニックス・リトリート”である。 空気は澄み、夜には湖に月が落ちる。 軽井沢ではありがちだが、ここでは月が、湖 […]
Continue reading第5話:何者かになりたくて
渋谷駅から徒歩7分。 「渋谷東大エクスプレス」、通称STX。 その個別指導ブースの一角で、額に汗をにじませながら、ノートPCを叩き続ける男がいた。 ニッポリ研二。 STXの生徒指導担任、そしてスピリチュアル系残念講師であ […]
Continue reading第4話:ガンジスにほえろ!
「最近、全部どうでもよくなってきて……」 渋谷・STXの個別指導ブース。 浪人2年目、東大志望の男子が、ポツリと呟いた。 「旅に出たいんです。インドとか。……ガンジス川の夕焼け、綺麗だろうなぁ……」 「インド……?ガ […]
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