第1話からのつづき その男の名は──伊藤八郎(いとう・はちろう)。 だみ声に、口の端にこびりついたヤニ。 真夏のアスファルトみたいに焼けた肌。 蝶ネクタイに派手なスーツ。 まさにコテコテという文字を絵に描いたような大 […]
Continue reading第1話:タクミ大阪に立つ!
風が冷たい。 夜明け前の大阪駅前で、島田巧(しまだたくみ)は、黒ずんだ革靴のかかとを引きずるように歩いていた。 靴底には、ガムテープ。 何度も貼り直しているため、すでに輪郭がボソボソにほつれている。 ズボンの膝も薄くなり […]
Continue reading第15話(終):起爆剤来たる
西新宿のタワービル内。 メディカルデラックス本部。 曇天の光が、応接室のガラスに鈍く反射していた。 「……また一人、辞退ですか?」 スタッフの報告に、エゾエ慎太郎は無言で頷く。 このところ、連日の面接ラッシュ。 書類選考 […]
Continue reading第14話:花火の人
受験業界では通称「メディデラ」と呼ばれている医学部専門予備校・メディカルデラックス。 その本部ビル10階、午後3時を少し過ぎた頃。 ガラス張りの面接室に、ひときわ目を引く姿が現れた。 ギラリと光るネイル。 濃いめのチーク […]
Continue reading第13話:参考書ブロガー
──メディカルデラックス本部、面接室。 ガラスのドアが開いた瞬間、どこか“気取った空気”がふわりと流れ込んできた。 「どうも、本日はよろしくお願いいたします」 頭を下げたのは、やせ型のメガネ男。 スーツの肩はどこか落ち着 […]
Continue reading第12話:腐敗の残滓
受験業界では通称「メディデラ」と呼ばれている医学部専門予備校・メディカルデラックス。 本部ビル37階、ガラス張りの面接室。 午前10時半。 スーツ姿の男が現れた。 微かにタバコの匂いをまとっている。 ノック3回。ドアが開 […]
Continue reading第11話:煮詰まった男
──その日の夜。 イチカワ雄二は、ファミレスの片隅で、ノートパソコンを開いていた。 「エゾエ……あんた、見る目ないね」 ニヤリと笑う。 「こっちはもう次のステージに進んでるんで──」 画面には、新しく立ち上げたウェブサイ […]
Continue reading第10話:その実績、本物か
メディカルデラックス本部ビル・37階。 受付を済ませ、案内されたのは白を基調にしたガラス張りの面接室。 午後2時ちょうど。 イチカワ雄二は、重厚な扉を開けて一歩踏み出す。 室内には、ひとりの男が既に着席していた。 黒のス […]
Continue reading第9話:主役になりたい男
第8話からのつづき 午後1時すぎ。曇りがちな空の下、高層ビルが林立する都心の一等地にそびえ立つ、タワービルの37階。 そこにあるのは──医学部専門予備校、メディカルデラックス。 通称「メディデラ」。 ビルの前に立つひとり […]
Continue reading第8話:キャリアコレクター
受験業界では通称「メディデラ」と呼ばれている医学部専門予備校・メディカルデラックス。 西新宿の高層ビル34階、ガラス張りの面接室。 午後2時30分に彼女は現れた。 柔らかいピンクのジャケットにフリル付きのブラウス、胸元に […]
Continue reading