応接室の空気は、会話が進むにつれて、少しずつ「仕事の説明」から「思想の対話」に変わりつつあった。 エゾエ慎太郎は、言葉を選ぶように一呼吸置き、柔らかく語り出した。 「竹内さん。……私は、あなたのような方が“教育に関心を持 […]
Continue reading第5話:スマートな志望動機
西新宿。 超高層ビル街の中にあるビル。 その34階にあるメディカルデラックスの応接室は、カフェのような香りと、静寂に包まれていた。 ダイキは、グレーのジャケットにノーネクタイ、濃紺のスラックスという“ビジネスカジュアル” […]
Continue reading第4話:心機一転、職探し
午前11時。 ダイキは、珈琲がやけに美味しいと評判のカフェで、ノートPCを開いていた。 フリーWi-Fiと木目のカウンターにはベーグルサンドとアイスコーヒー。 会社員時代では考えられなかった、ゆったりとした午前中。 ログ […]
Continue reading第3話:再起の地を探して
その朝、ダイキはプレゼン資料の修正を終え、ようやく席を立った。 時刻は午前3時過ぎ。椅子の背もたれに体を預けた瞬間、視界がぐにゃりと歪んだ。 「……あれ?」 立ち上がろうとしたその瞬間、膝が抜けるように力が入らなくなり、 […]
Continue reading第2話:進行する崩壊
ベイカー・コンサルティング・ファームに入って3年目。 竹内大軌(たけうちだいき)は、業務にもチーム運営にも、ある種の“慣れ”を感じはじめていた。 業界用語、パワポの構成、上司の癖、パートナーの気分、クライアントが求める「 […]
Continue reading第1話:輝きのファーストキャリア
東京・丸の内の高層ビル群。その一角にある、ベイカー・コンサルティング・ファームのオフィスは、冷えすぎた空調と静謐な緊張感に包まれていた。 竹内大軌(たけうちだいき)28歳。 一橋大学経済学部を卒業して5年目。 いま彼は、 […]
Continue reading第9話(終):世界はもっと面白い
あれから2年。 私は今、大学生活をそれなりに楽しんでいる。 四ツ谷のあの大学にいた頃より、ずっと居心地がいい。 たしかに偏差値は低めかもしれない。 でも、それが何?って思う。 この大学の学生たちは、良くも悪くも素直だ。 […]
Continue reading第8話:感動の物語にしてあげた
初春の風は、乾いていて、少しだけ甘い。 受験会場へ向かう電車の中、私はスマホを握りながら、ふと思った。 (……なんか、私、主人公やってるな) ──半年で、バカな高卒女を大学生にしてやった。 島田タクミの脳内では、たぶん、 […]
Continue reading第7話:世界を広げる、フリ
「半年で、俺が大学生にしてやるよ」 島田タクミの口からそのセリフが出たとき、私はグラスを拭きながらこう思った。 (なんか、面白くなってきた) * 私は決して自分から高卒と言い出したわけではない。 「高卒なんだってね」と言 […]
Continue reading第6話:それは虚勢か、習性か
その夜のことは、今でもよく覚えてる。 フリーでふらっと入ってきたラガーシャツの中年男。 雰囲気は昭和丸出し。 声は倍音。香水は強め。 首には金のネックレスが鈍く光る。 なのに、手首には時計がなかった。 あれだけ「俺が、俺 […]
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