──高層ビルが林立する都心の一等地。 その中にそびえ立つ、タワービル37階。 そこにあるのは、医学部専門予備校── メディカルデラックス。 通称、メディデラ。 年間の学費は最低でも800万円。 夏期講習や個別指導を加えれ […]
Continue reading第6話(終):勝手に勝利宣言
──巣鴨・邁進塾。 邁進塾は、粘り強く耐えた。 誠実な指導を続けた結果、地域新聞の教育欄に小さな記事が載った。 【巣鴨の小さな塾、静かな人気──「一人ひとりを大切に」】 それを読んだ保護者たちが、少しずつ戻ってきた。 チ […]
Continue reading第5話:怪文書とネットの誹謗中傷
ある日、邁進塾に通う生徒の保護者たちのもとに、次々と不審な封筒が届き始めた。 《注意喚起》 《巣鴨周辺に危険な塾が存在します》 《未成年を食い物にする悪質経営者の噂あり》 ──差出人不明の、悪意に満ちた怪文書だった。 […]
Continue reading第4話:静かなる反撃
──巣鴨・邁進塾。 その日、イヌドウは静かに、生徒たちを集めてこう言った。 「みんな、最近……この周りで変なことが起きてるよね」 生徒たちは顔を見合わせ、こくりとうなずいた。 イヌドウは、少し微笑んだ。 「心配しなくてい […]
Continue reading第3話:邁進塾、包囲される
──ある平日の午後。 巣鴨・邁進塾の周辺に、奇妙な空気が漂い始めていた。 コンビニ前にたむろする、やたら目つきの悪いスーツ男たち。 ビルの入口付近では、昼間からワンカップの日本酒やウイスキーをラッパ飲みするオヤジたち […]
Continue reading第2話:怒りの総動員
JR巣鴨駅から徒歩7分、古びた雑居ビルの3階。 そこにイヌドウが立ち上げた塾── 【邁進塾】 がひっそりとオープンしていた。 生徒はわずか十数人。 チューターは元カンゾウ組の大学生たち。 授業は、丁寧に進んでいた。 イヌ […]
Continue reading第1話:退職、引き抜かれた!
──JR高田馬場駅から徒歩5分。 『関東学力増進機構(通称・カンゾウ)』本部ビルの総務部に、一本の退職届が提出された。 提出者の名は、犬堂慎也(いぬどうしんや)、34歳。 京大卒、塾講師歴10年以上。 週3回、数学を教え […]
Continue reading第3話(終):無理をしない贅沢
──四月、ある平日。 沢田ユウコは、北千住駅のホームに立っていた。 特急「リバティけごん」の発車ベルが鳴る。 行き先は、日光。 (たまには一泊くらい、いいか) 座席に腰を下ろし、窓の外をぼんやりと眺める。 平日昼間の特急 […]
Continue reading第2話:大げさな羊たち
──JR池袋駅からバスで7分。 北池袋にある伊東予備校・池袋校の事務室。 午後2時。 外は春の強い風が吹き荒れ、校舎の窓ガラスがカタカタと鳴っていた。 コピー機の前で、学生アルバイトの女子がぴったりメイク直しをしている。 […]
Continue reading第1話:無理してる人々
──JR池袋駅からバスで7分。 北池袋にある伊東予備校・池袋校の事務室。 「……また島田先生、やらかしたらしいよ」 休憩中、同僚の女性スタッフが囁く。 沢田祐子(さわだゆうこ)は、パソコンの画面から目を離さないまま、相槌 […]
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