第16話:夜の街で、再び

第15話からのつづき 新宿・歌舞伎町。 夜の雑踏に、光と音と酔いが混ざり合っていた。 ハルカは、TOHOシネマズの前を通り過ぎ、職安通り方面へと歩いていた。 このあたりには、“トー横”と呼ばれている場所がある。 ほんの少 […]

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第15話:投稿ボタンの先に

その日、ハルカは最後の「夜」を見届けるつもりで、新宿に向かった。 トー横。 東宝ビルの横。 かつては、そこが居場所だった。 ボロボロのジャージ、缶チューハイの空き缶、タバコの吸い殻。 誰かが脱ぎ捨てた厚底スニーカー。 「 […]

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第13話:少し役に立てた

「ねぇ、あの子、泣いてるよ」 新宿東宝ビルの横──トー横通りの隅っこで、膝を抱えてうずくまる女の子。 年齢はハルカより下か、同じくらいか。 髪の毛はボサボサで、コンビニ袋を抱えていた。 「どうしたの?」 声をかけると、少 […]

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第11話:新宿・トー横

昼夜逆転。 スマホの中にばかり目を向けて、配信動画やSNSを眺める時間が増えた。 かつてのクラスメイトが大学の写真を投稿している。 カフェでのランチ、サークルの飲み会、新しい友達との笑顔。 スクロールするたびに、自分だけ […]

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第10話:滑り落ちた春

第9話からのつづき 春は、静かに過ぎていった。 合格発表の掲示板の前に、ハルカの名前はなかった。 スマホを何度更新しても、結果は変わらなかった。 滑り止めの私大すら受けていない。 ──落ちた。 「浪人か……」 呟いた声は […]

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第9話:ファミレスの夜

第8話からのつづき ──それは、なんでもない夜の、なんでもないファミレスだった。 ハルカは新宿駅西口の改札を出て、TOHOシネマズ方面とは反対側── いわゆる「ビジネス街寄り」の静かな通りを歩いた。 少し歩いた場所にある […]

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第8話:名刺と千円札

──午後10時。 カンゾウの自習室は、いつもより静かだった。 試験が終わったばかりということもあり、生徒の数はまばら。 時計の針の音が、やけに大きく聞こえた。 「……広瀬さん、そろそろ閉館ですよ」 受付のスタッフが、申し […]

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第7話:どこまで本気?

──塾長室のドアを、開けるか、開けないか。 その判断に、時間がかかるようになったのは、いつからだったろう。 「……あの子、また島田塾長と話してるよ」 「もしかして、お気に入りってやつ?」 そんな声が、カンゾウの中で少しず […]

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